イメージのひとり歩き

夢の中で思い描く立体作品があります。自分がもう一度彫刻を学ぶ学生に戻ったら、どんな作品を作っているのだろうと、イメージの中で遊ぶ自分がいるのです。夢で見る作品は鉄の廃材を寄せ集めた人体彫刻です。ジャコメッティのような細い人体、いや全身が細いわけではありません。手や肩、腰や足は古くなった機械の一部を使った鉄材で作られて、その部位がわかるような塑造がなされています。あとは細い鉄筋のようなもので作られ、かろうじて人体が立ったり、ポーズをしたりしている虚無な彫刻です。師匠の池田宗弘先生が作る真鍮直付けの猫には、痩せ細って骨だけになり、腹に穴のあいた凄まじい作品があります。その存在感が若い頃の自分に強烈な印象を残していて、夢で見た人体作品も穴だらけの途切れ途切れになったカタチを自分にイメージさせるのだと思っています。自分は真鍮ではなく鉄で作っていて、それは茶褐色に錆びた屑鉄です。これほど鮮明なイメージに囚われている自分は、夢の中では若々しい学生で、これからこの彫刻を発展させるべく意気揚々としているのです。まさにイメージのひとり歩きですが、定年になり時間が出来た時は、果たしてこのイメージを具現化しようという境地に立てるのでしょうか。

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