「ホドロフスキーのDUNE」未完の大作

東京渋谷にあるミニシアターで「ホドロフスキーのDUNE」を観ました。「DUNE」は未完なので、これはインタヴュー等で綴られたメイキング映像でした。見終わった後、まず「DUNE」の発想の凄さが伝わってきました。興行的に成功するかどうかではなく、真の芸術性を求めて巨額を投じようとしたホドロフスキー監督の意図がよくわかりました。「DUNE」は斬新なSF映画で、宇宙を舞台にした壮大な叙事詩になるはずでした。キャストを見るとサルバドール・ダリやミック・ジャガー、オーソン・ウエルズ等錚々たる人たちがいて驚きました。スタッフでは音楽にピンク・フロイド、キャラクターデザインにメビウス、宇宙船デザインにクリス・フォス、建造物デザインにH.R.ギーガー、特殊効果にダン・オバノン等これも錚々たる人たちです。「DUNE」のコンセプトは「エイリアン」や「スターウォーズ」「マトリックス」等に繋がっていったようですが、SF映画の発展に附与した影響は計り知れないものがあると思いました。とりわけ自分はH.R.ギーガーのデザインに惹かれます。人体を象徴的に表した建造物やどこまでも続く奇怪な道などが不安を煽り、宇宙的な規模で展開するドラマを感じさせます。「エイリアン」の巨大動物の骨格を模した洞窟に、閉塞した面白さが宿り、西欧的な装飾性にぎっしり埋められた建造物は、まさに「DUNE」でも、その表現を遺憾なく発揮されたことでしょう。ハリウッド的スペクタクル映画とは異なる世界観を表出したであろう「DUNE」を完成したカタチで観たいと願うのは私だけではないでしょう。

関連する投稿

  • 映画「ゴッホとヘレーネの森」雑感 先日、横浜市中区にあるミニシアターに映画「ゴッホとヘレーネの森」を観に行ってきました。後期印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホは波乱に満ちた生涯を送ったため、特集番組や映画化されることが多く、私 […]
  • 映画「クリムト」雑感 先日、常連にしている横浜のミニシアターに映画「クリムト」を観に行ってきました。正式なタイトルは「クリムト […]
  • 映画「シュヴァルの理想宮」雑感 先日、横浜市中区にあるミニシアターに「シュヴァルの理想宮」を観に行きました。私自身は深い感銘を受けて、主人公が後半生を費やした宮殿作りのことが頭から離れずにいます。人は何を生きがいにしていくのか、こ […]
  • 週末 母の通院付添い&映画鑑賞 やっと週末になりました。この1週間は来年度に向けての取り組みが始まり、私は来年度の職場運営の構想を練りつつ全職員と面接を行いました。少しずつ疲労が溜まってきていたので、今日は週末の有難味を感じます。 […]
  • 映画「ヨーゼフ・ボイスは挑発する」雑感 先日、横浜の伊勢佐木町にあるミニシアターに映画「ヨーゼフ・ボイスは挑発する」を観に行きました。20世紀ドイツで最も有名な芸術家と言えばヨーゼフ・ボイスです。私が大学で彫刻を学んでいた頃に、ボイスが来 […]

Comments are closed.