「発掘された日本列島2014」展

東京両国にある江戸東京博物館に到着した時は、正午を回っていて、朝早くから展覧会を見て歩いていた私は些か疲れもありましたが、表記の展覧会に何とか辿り着きました。江戸東京博物館は国技館の隣にある敷地面積の広い博物館です。江戸の街が雛型で再現されている楽しい展示で知られていますが、その日の私は他に目もくれず、古代出土品のあれこれを真剣な眼差しで見ていました。東日本大震災の復興事業に伴う発掘調査の成果や、埋蔵文化財の保護を図りながらの調査から見えてきた豊かな歴史に、そこに携わった調査団の努力が窺い知れました。自分が留意するのは深鉢や土偶で、とくに火焔土器の内面に炭化物が付着していたことで鍋として煮炊きに使われていた事実に興味津々でした。焼町土器と称された土器に見られる渦巻き文様は、まさに造形美に溢れた表現で、自分の陶彫制作の参考になっています。これは欧米諸国でもJOMONとして有名になり、世界に類を見ないユニークな文化だったことが分かります。謎の多い縄文土器だからこそ現代人が想像を働かせてみたり、学術的な考察が続いていることも注目に値します。土偶は安産・多産を願う女性の偶像という定説がありますが、土偶によっては着飾った女性を表現したものがあり、これは当時の社会が女性を尊重していた証かもしれません。女性を卑下した封建社会の前に、こんな豊かな社会が存在していたことが、日本人として誇りと思うのは私だけではないでしょう。

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