「ジャック・カロ展」奇想の劇場

東京上野の国立西洋美術館で開催されていた「ジャック・カロ展」に行った感想を書きます。副題に「リアリズムと奇想の劇場」と謳っていたのが、この展覧会を見ようと思ったきっかけです。細密な銅版画による人物描写、とりわけ奇想の劇場として扱っていた仮面劇のコスチュームや民衆を描いた俯瞰的な風景に大変な力量と表現の深さを感じました。銅版画の中で、特にエッチング技法はカロによって発展的に開発され、現存する美しい線描が可能になったようです。同時代を生きたレンブラントに影響を与え、さらに銅版画の進歩という絵画史としての位置を鑑みると、カロの存在は想像以上に大きかったのだろうと思っています。日本では馴染みの薄い芸術家ですが、展示されていた銅版画の世界に忽ち魅了されてしまいました。

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