「余白の芸術」を読み始める

「余白の芸術」(李禹煥著 みすず書房)を読み始めました。かなり前に購入してあった書籍ですが、今回初めて読みます。実は「枯山水」(重森三鈴著 中央公論新社)を読み終えた時に、日本庭園の象徴性とも言うべき余白の美に関連して本書を読みたいと思っていたのでした。あれやこれやと読書遍歴があって今になって読み出しましたが、やはり「余白の芸術」は面白い内容です。著者がよく言う「同一性と差異性」「ズレ」が旧知の感覚として自分の中に入ってきます。思えば、自分が学生時代に東京日本橋にあった南画廊で「点より」「線より」という平面作品に遭遇したのが、李禹煥ワールドへ誘われた最初の出会いでした。そこから最近の横浜美術館での大がかりな展覧会まで、ニュートラルな鉄板とゴロンとした自然石を組み合わせただけの単純で、しかも有言な作品群に至るまで、実に多くの李禹煥ワールドに出会ってきました。自分には李禹煥は分かり易い芸術家の一人です。自分が東洋人の感覚を持ち合わせているせいでしょうか。亡父が営んでいた造園、とりわけ庭石を点在させた場の創出と通じるものがあるせいでしょうか。自分はいかにも西洋彫塑的に造り込みをやってしまう世界に生きていますが、本書を通して余白の持つ意味を考えようと思います。

関連する投稿

Comments are closed.