鑑賞から批評へ

創作活動には思索とその具現化のための制作があります。思索は自分の脳裏に刻まれた知識や経験の中からイメージとして湧き上がるカタチに意義を与えるものです。イメージは訓練によって培われると自分は信じています。そうした一切のことは日常から非日常に至る自分の視取る振幅の大きさによると考えています。非日常を感じ取り易い方法として、気軽に出来ることは美術品の鑑賞です。美術館やギャラリーに行って作品を見る、次に作品から何かを感じ取る、これが鑑賞の第一歩です。自分の感情の襞に引っかかる作品もあれば、どう見ても退屈を覚える作品もあります。その作品選択こそが自分らしさを捉える方法と自分は考えています。自分の好きなものは何かという自己発見に繋がるからです。そこまでで心の潤いを得られるのが鑑賞です。この作品に出会えて良かったと思える一瞬があれば、それはもう珠玉の鑑賞と言えるでしょう。批評はそこから一歩も二歩も奥に入り、自分なりの解釈を加え、新たな鑑賞の方法を示唆するものです。そのための薀蓄や発想も必要です。言わば作品を媒体にした創作行為とも考えられます。優れた批評は、総括的な全体の中で緻密な部分が織り成す気迫の篭ったデッサンを見ているような感想を持ちます。どんなに心動かされる作品にあっても自分は批評まで辿り着くことが出来ません。単なる鑑賞で充分満足し、それを糧にして創作活動に繋げていけると現在思っているからです。作家と評論家は役どころが違うと思っている節が自分にはあります。

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