「変身」読後感

「変身」(カフカ著 高橋義孝訳 新潮社)を読み終えました。2泊3日の出張に携帯した文庫本ですが、往復新幹線の車中で読み終えることが出来ました。中学生の時に初めて手に取った文庫本でしたが、主人公が遭遇した不思議な状況に帰結感がないまま終わる本書に納得できず、当然カフカが生きた時代背景もわからず、理解が覚束ないまま忘れかけていたのでした。40数年を経た現在の自分の視点は、カフカの自白とも思える内省に他の登場人物の心理が交差して、短いながら凝縮した世界に惹かれました。中学生時代に遡ると、こんな状況にあって何故家族が騒ぎ立てないのか、マスコミや研究者が突如虫になった男の原因解明に努めないのか、それどころか主人公を隠蔽して家族が通常の日常生活を送っていられる不条理に悩んでしまいました。単純でない謎解きが落としていった波紋が広がり、やがて自分の専門となる美術の方面から表現主義の興った時代状況を把握し、おまけに20代後半で滞欧生活を送って、初めて絡んだ紐が解けていくように感じました。ただ、変身したものが虫であったという意図、その究極のところが今でもわかりませんが、世情の不安からくるギクシャクした心理表現は十分に伝わりました。

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