師事と私淑について

自分が彫刻家として活動を始めるに至った経緯を振り返って見ると、数人の彫刻家の存在を忘れるわけにはいきません。大学に入って実際に指導を仰いだのが池田宗弘先生で、今も長野県の住居兼工房に伺っています。精神的にも技能的にも手を取って指導していただき、絆としては一番深いものがあります。学生時代、池田先生の個展を手伝い、それが縁になってギャラリーせいほうでの自分の個展開催が実現したと言っても過言ではありません。精神的な師匠としては故中島修さんです。自分の滞欧中の憧れであり、オーバーエスタライヒ州のお住いにお伺いした際、幾度となく助言をしていただきました。同じギャラリーせいほうで個展をやれることを喜んでいた最中に帰らぬ人となりました。海外では助言をいただいたK・プランテル、F・フンデルトワッサー諸氏がいますが、師事というより私淑に近いかなぁと思っています。私淑では大学時代に共通彫塑研究室にいた保田春彦先生と若林奮先生がいます。人体塑造から抽象に展開した自分の作品を鑑みると、私淑していた保田先生や若林先生の作品に自分が近づいていると思っています。当時の自分は人体塑造の取り組みに精一杯で、抽象に向かうコンセプトが構築されておらず、漠然と2人の抽象作品に魅了されていたと考えています。あるいは自分の抽象に向かう契機はこんなところに隠れていたのかもしれません。今年の暮れに故若林先生が個展を開催され、保田先生が書籍を発行されました。私淑した2人にさらに近づけた気がしました。

関連する投稿

  • 16’個展最終&搬出の日 11回目の個展の最終日を迎えました。個展は自分にとって誇らしい面がありますが、自己内面世界を多くの人に見せるというのは恥ずかしい一面もあって、最終日を迎えることで実はホッとしています。今日は朝から懇 […]
  • 東京京橋の「サイトユフジ展」 画家サイトユフジさんが東京の京橋にあるギャラリー東京ユマニテで個展を開催しているので、家内と見て来ました。私は20代の頃、オーストリアの首都ウィーンに滞在していましたが、サイトさんはその頃既にウィー […]
  • 三連休 制作&美術館&映画館 今日から三連休になります。このところ連休の初日は工房で制作をした後、美術館に出かけていくことが多いように思います。今日も例外ではありませんでした。ただし、活動した密度から言うと今日は今までより、さら […]
  • 個展9回目のオープニング 今日から東京銀座のギャラリーせいほうで私の個展が開催されます。今年で9回目の個展になります。初めての時のようなワクワク感は自分にしては半減したもののオープニングにはいろいろな知人友人が訪ねてくれまし […]
  • 「種村李弘の眼 迷宮の美術家たち」展 先日、東京の西高島平にある板橋区立美術館に行き、表記の展覧会を見てきました。故人である種村季弘は、私が滞欧中に親しんだウィーン幻想絵画を取り挙げた文学者で、深層心理に働きかけをするドイツ・オーストリ […]

Comments are closed.