引き籠りの創作世界

旅行はせず自宅の地下室に籠って創作活動を展開したジョセフ・コーネル。近隣を散策し、書籍を漁ってはあらゆるものを収集し、それによって空想の旅に出ることが、即ち創作行為に結びついていた孤独な造形作家に自分は共感を覚えます。自分は引き籠りではありませんが、それは社会的立場ゆえに人と交わらなければならない仕事があるからであって、本来持っている自分の素質はどんなものか自分でもよく分かっていません。ひょっとして社交的に振舞っているに過ぎないのではないかと思うこともあります。中高生の時代にズル休みをして、ゴロ寝をしながら窓から空に浮かんだ雲の行方を追った記憶があります。他愛のない日常を記憶しているのは何故なのか、自分は内向きに生きたい願望があるのかもしれません。週末を過ごす工房も引き籠りの創作世界に浸っているとも言えます。外部の情報を遮断し、自分の中の想像世界を逞しく育てて、時間や空間を飛び越えていく理想に自分を重ね合わせると、創作の糸口が掴めるような気がします。仕事が始まる月曜日は全てをリセットしなければならず、引き篭りの創造世界から抜け出てこなければ職場に足が向かないのです。二束の草鞋生活で気持ちの転換が上手くできるようになっていますが、時折これは自分に無理を強いているように思えてならないのです。

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