エル・グレコに関する個人的遍歴

スペインを代表する画家であるエル・グレコ。この特異な画風を理解するのに自分はかなり時間を要しました。描かれた顔が小さく異様に伸びた背丈を見ると人体バランスがいかにも奇異で、しかもハイライトの強い独特な色彩を強烈な筆致で表す絵画は、具象であっても写実としては考えられない要素が多く、若い頃はその雰囲気に反発さえ覚えました。滞欧生活をしている頃、自分は一度スペインに行っていますが、ゴヤやベラスケスに比べるとどうしてグレコが巨匠として扱われているのか理解できませんでした。ところが突如グレコの絵画が理解でき、さらに表現の卓抜さに感銘さえ受けたのでした。何故なのか自分でも判りませんが、確かスペインのどこかの教会にグレコの絵画があって、その荘厳な輝きに圧倒されたのかもしれません。しかもそれは図版で見たのであって、実物ではありませんでした。人体バランスが奇異で強烈な筆致をもつグレコの世界が、マニエリスムではなく幻想絵画でもなく、その時は不思議なリアルさをもって迫ってきたのです。キリスト教世界を描いているにも関わらず、宗教の高尚さと人体の艶めかしさが融合し、感覚で描かれたように見えて、実は作者の綿密な計算があるとも自分には思えました。自分の芸術遍歴でグレコほど評価が変わった画家はいません。東京都美術館で開催されている「エル・グレコ展」を見て、その認識を新たにしました。晩年のめくるめく画面構成はグレコそのもので、追従を許さない特異な世界です。ある作品に関して、詳しい感想を書きたいと思いますが、これはまた機会を改めます。

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