最少形態で最大空間

展示空間一面に広げられた物質。小さな単位を点在させることで大きな空間を獲得するインスタレーション。壁に掛けられ、床に置かれ、空中を浮遊するカタチ。言うなれば最少形態を撒いて最大空間を創出させる装置に、自分は今後の自己表現の可能性を感じています。そんなインスタレーションを数々見てきて、自分ならばどんな空間演出ができるだろうと思いを巡らせることがあります。現在制作している集合彫刻は、単位を組み合わせることによって量を獲得しています。集合があるならば拡散があります。拡散彫刻という言い方は変ですが、最少形態で最大空間の試みをやってみたいと思うこの頃です。床や壁に撒き散らした小さな複数形態は、それぞれが主張し合って相互に緊張した空間を作るものと期待しています。自分の集合彫刻は複数形態が主従の関係で組み立てられて、ひとつの大きな量を形成しますが、拡散すれば全ての形態が個々で主張する関係が出来ると思うのです。調和も不調和も併せて空間を創出しうる作品を考案しています。音楽に不協和音が導入されたのは1世紀以上も前ですが、美術にも調和を崩す様々な運動が起こりました。刺激や緊張ある空間解釈が生まれ、それも美術史の中に組み込まれている現状があります。自分も自作によって自己美術史を繋ごうと思っています。

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