「斎藤國靖 〈仮説〉としての絵画」展

武蔵野美術大学教授退官記念の展覧会が同大美術館で開催されていました。油絵学科で教壇に立っていた斎藤氏に自分は面識がありません。自分がいた30年も前には斎藤氏が掌っていた絵画組成室はなかったように思います。絵画組成室は歴史的絵画の模写を通し、テンペラ技法や支持体等の描画材料を研究するシステムがあり、それは本当に羨ましいと感じます。古典から学ぶことはどの時代でも大切で、表現に説得力を持たせるためには必要なことと思います。「斎藤國靖 〈仮説〉としての絵画」展は、現代の肖像画をヨーロッパ古典絵画に重ねて確固たるデッサン力の上に画風を展開していました。〈仮説〉というのは、絵画は決定性も絶対性もなく、さまざまな可能性をもつ仮説に過ぎないと解説されていました。こうした教授が常に学生を指導助言されていたことは、素晴らしい教育環境が整っていたと思います。古典に根差した姿勢は、学生として学ぶべき姿勢だと自分も心得ていました。自分も学生だった頃は、新しい美術界の動向を知りつつも、デッサン力を身につけるため、人体塑造を繰り返しやっていました。アカデミックと呼ぶ人もいるかもしれませんが、それは旧態依然としたものではなく、専門家としての自覚を自分につけるためのあり方だと思うのです。今回の展覧会を見て、そんなことが頭を過りました。

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