「西洋の没落」に纏わる情報

「西洋の没落」(O.シュペングラー著 村松正俊訳 五月書房)を読んでいて感じていることですが、自宅に眠る史学や哲学(叔父に中国考古学者がいて、別の叔父がカント哲学者)の専門書と比べると、本書には独特な発想があり、また断定的な言い回しがかなりあります。そのせいかどうかわかりませんが、刊行された当時の風評も様々で、いまだに評価が定まらないと聞きました。しかも2段組み400頁が2巻に亘る大作なので、学者肌でもない自分は否が応でも影響を受けてしまい、罠に嵌ったような感覚を持ちます。文化形態の比較や難解な比喩も多く、それでも自分は面白いと感じているので、これが学界でどう位置づけられているのか知りたいと思っています。ほんの触りだけ読んだ家内はこの独断的な主張に嫌悪感を持ちました。ネットで調べてみると、本書は第一次世界大戦終了後に刊行され、その大戦で西洋が疲弊した様子をシュペングラーが見て、当初の論調を変更して現行になったようです。しかも本書に描かれていた歴史的運命の言い回しが、当時台頭してきたナチスの未来的神話(第三帝国)の捏造に使われたこともあって、問題作とされました。自分は本書全体に散りばめられた比較類推だけではなく、アラビア文化に費やされた内容にも驚嘆しています。世界史を従来の専門書とは異なる視点から捉えた本書は,やはり「独特な」手法による大作としか言いようのない書籍であることは間違いなさそうです。

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