金沢の「工芸未来派」展

今夏、石川県金沢に出かけた目的のひとつは金沢21世紀美術館を見てくることでした。昔、金沢を訪れた時には金沢21世紀美術館はありませんでした。美術館は兼六園に近い場所にありました。円形をした開放的な建物は、いかにも現代美術を体験するのに相応しい環境でした。企画展は「工芸未来派」展で、現在活躍している工芸家の作品を堪能できました。工芸と彫刻はどう違うのか、かつて工芸は日常品として使われるものを示しましたが、現代では境界がはっきりしなくなっています。技巧的な部分で工芸の面目躍如たる高度な技術をもつものがあり、これこそ工芸と思いきや、素材のもつ可能性に挑むもの等があって、「工芸未来派」展では様々な機微に富んだ造形が見られました。彫刻との境界は定かでなくなっている昨今ですが、自分は最初の発想から空間の捉え方が何となく彫刻と工芸では違っているように思えます。工芸の中には限りなく彫刻に近い造形もあります。またその逆もあります。自分は陶を使うので工芸家の友人に教えを乞う場面があります。でもこの場合は陶を陶芸ではなく彫刻の素材として扱っているので、焼成で無理なカタチがあって失敗も少なからず生じます。そう考えると工芸は「初めに素材ありき」なのかもしれません。今回の展覧会で気に留めた作品は、中村信喬氏の綿密に細工された陶人形と、野口晴美氏のアニミズム的な陶彫です。そう書いていくと自分の気に留めた作品はいずれも彫刻的な要素が強いものであることに改めて気づきました。

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