アポルロン的魂とファウスト的魂
2012年 7月 18日 水曜日
「西洋の没落」(O.シュペングラー著 村松正俊訳 五月書房)を読んでいると、ギリシャ・ローマ文化と西洋文化の相違があらゆる場面で比較されています。簡単に言えば見たままを静的に表し、本書の語彙を使えば彫塑的と言えるギリシャ・ローマ文化をアポルロン的魂と呼び、その一方、過去や未来を空間として動的に捉え、本書の語彙を使えば音楽的と言える西洋文化をファウスト的魂と呼んでいます。こうした洞察は自分にとって初めてのことで、ギリシャ・ローマ文化と西洋文化の間に確固たる溝が存在していたことに改めて驚いています。確かにギリシャ彫刻には表情がなく、悲劇を初めとする演劇表現は単調で形式的です。それに比べて例えばシェイクスピアの劇では心理的で情念としての葛藤があり、それ故人物描写には立体的な陰影が存在します。先日のNOTE(ブログ)でゲーテによる壮大な戯曲「ファウスト」を取り上げて、その粗筋等を簡単に書いたのは、本書に度々登場するファウスト的魂とは如何なるものかを改めて自分が確認したかったためです。そうしたことを踏まえてヨーロッパに行ったなら見るものや接するものが変わっただろうと思えます。20代の渡欧前に「西洋の没落」を読破できなかった自分に悔いがありますが、今後ヨーロッパに行ける機会があれば、西洋文化の成り立ちを彼の地で考えてみたいと思っています。
関連する投稿
- 「保田龍門・春彦 往復書簡」読み始める 随分前に武蔵野美術大学出版局より購入しておいた「保田龍門・保田春彦 […]
- 西洋の没落「音楽と彫塑と」そのⅡ 表題の本書の持つ難解な論理に慣れてきたとは言え、いまだ理解に苦しむ箇所も多々あります。朝の通勤時は比較的頭に入り、夜の帰宅時はボンヤリと目で文面を追うだけになってしまいます。「西洋の没落」(O.シュ […]
- 個を点在させる空間 「イサムノグチ庭園美術館」の野外工房とも言うべき「石壁サークル」は、開放的で豊かな空間が広がっています。個々の作品を作るために設置した石材が、ひとつずつ異なる主張をしているにも関わらず、個体同士が響 […]
- 胡弓演奏と彫刻制作 日曜日は家内が胡弓の練習に行く日です。私は工房に篭って朝から夕方まで彫刻の制作に明け暮れています。工房での制作が終わる夕方6時頃に、家内から連絡があり、駅まで家内を車で迎えに行くのが日曜日の日課にな […]
- 「ウォーキング ウィズ ダイナソー」観劇 先日、横浜アリーナで「ウォーキング ウィズ ダイナソー ライブアリーナツアー イン […]
Tags: 彫刻, 書籍, 音楽
The entry 'アポルロン的魂とファウスト的魂' was posted
on 7月 18th, 2012
and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.