ワグナー・ナンドール美術館

先日、栃木県益子へ行った時にワグナー・ナンドール美術館を訪ねました。益子の陶器市会場から歩いて数分の小高い丘の上に美術館はありました。ワグナー・ナンドールというハンガリー人彫刻家を知ったのは、この時が初めてでした。「こんな雨の中をよくいらっしゃいました。今日は誰も来ないかと思いました。」と受付の婦人に招かれて美術館に入ったら、その建築空間に忽ち魅せられてしまいました。丘の段差を利用した美術館には、実際に作家本人が使用していた住居兼アトリエ、茶室、学生寮があり、さらに没後に建てられたギャラリーや野外展示場がありました。ワグナーは現ルーマニアに生まれた人で、ブタペストの美術大学在学中に第二次大戦に赴き重傷を負ったようです。その後のハンガリー動乱によってスウェーデンに亡命を余儀なくされ、そこで知り合った日本人女性と結婚、栃木県益子にやってきた経歴があります。言わば世界情勢に翻弄された人生を歩んだ人で、作品のテーマが世界幾多の宗教思想や哲学に向かったのは十分理解できると思いました。歴史上の偉人たちが集う空間を具象表現した「哲学の庭」は作家の代表作で、美術館にも野外展示されていました。自分は技巧上の完成は認めるものの、意図が説明的すぎて今ひとつ心に入り込むことはありませんでした。表現が具象ではなく具体なので、そこに作家が広い世界観を捉えようとしているにも関わらず、逆に狭義な印象を持ってしまうのは私だけでしょうか。美術館そのものは素晴らしい環境の中で作品を鑑賞するのに相応しい条件を備えていました。

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