P・クレーによる建築学雑感

現在読んでいる「クレーの日記」に建築に関するクレーの考えが述べられている箇所があります。長い文章ですが引用します。「イタリアで建築芸術の理解を深めてくると、ものを見る目が肥えてくるのが、自分でもすぐわかるのであった。どの建物も実用のために建てられたのに、そこにあらわれている芸術は、ほかの芸術分野の作品にくらべて、はるかに調和のとれた純粋さを保っている。この空間の有機的構造というのは、どんな先生にならうのよりも大きな収穫であった。私のいうことは、さぞ抽象的に思われるであろう。しかし、高い次元へと精神が成長するときには、だれでも専門家ぶった難しい口をきくものなのだ。絵画や『自然』と違って、建築作品では、個々の部分の相互関係を目でみて計算することができる。だから、愚かな初心者にとっても、建築物は手っとり早く卒業できる速成学校のようなものなのだ。数的なものを有機体という概念で理解できるようになれば、自然画もはるかに易しく、また正しく描けるかと思う。また、建築物は無限に複雑になりうるから、建築という宝庫のいずみはおよそ尽きることを知らないのである。はじめて建築物を前にしたとき、どうしてよいか、ただとまどうばかりかと思う。これは、末端の梢ばかり見て、太い枝や幹を見ないためである、と言いたい。太い枝を一度見れば、先の先の小枝の葉にも、全体の法則が顕現しているのがわかり、またこの法則を利用できるであろう。」(訳:南原実)

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