「ノア・ノア」の情景描写
2011年 12月 9日 金曜日
通勤途中に読んでいる「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 岡谷公二訳 みすず書房)にある「ノア・ノア」は、ゴーギャンがタヒチ滞在の回想を綴ったもので、詩情溢れる文章です。ゴーギャンがタヒチの民族を受け入れ、また周囲からも受け入れられていく過程に興味を覚えました。そこから西欧の文明人が南海の島に出かけていき、そこで彼らと混じって漁に出かけたり、彫刻のための木を切り倒して運んだりという原始的で豊かな生活がイメージ出来ます。「私の前をゆく彼の動物のようにしなやかな体は、魅力的な輪郭を持ち、性を感じさせなかった。この若さから、周囲の自然とのこの全き調和から、芸術家としての私の心を魅する美が、香り『ノア・ノア』が生まれていた。単純なものと複雑なものとが互に牽かれあう気持ちから生まれた、この堅固な友情から、私のうちに恋情が花ひらいた。」という箇所で、若い青年に対する性を超えた感情が芽生え、ゴーギャンは不思議な恋情に憑かれてしまいます。「私は罪の予感、見知らぬものに対する欲望、悪のめざめのごときものを感じた。」と続き、やがて平静な我に返るくだりがあります。まさに芸術的なインスピレーションを与えてくれたタヒチでの生活が、その後のゴーギャンを憑き動かしていくのだと思いました。
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