「ノア・ノア」の出版事情

「ゴーギャン オヴィリ 一野蛮人の記録」(ゴーギャン著 ダニエル・ゲラン編 岡谷公二訳 みすず書房)を通勤の途中に読んでいます。同書の中に「ノア・ノア」という章があって、その美しく香しい情景描写に没頭してしまいました。「ノア・ノア」を書き下ろした当時、ゴーギャンは友人の詩人に原稿を委ねたそうです。1893年頃の話で「ノア・ノア」に友人の詩人がかなり手を入れて共著として出版したようですが、もとの風味が損なわれていたことで、ゴーギャンは大変残念な思いをしたことが本書の前述にありました。いろいろな事情があって、初稿の「ノア・ノア」が復刻されて世に出たのはやっと1966年頃というので、ゴーギャンは既に他界していてこの事実を知りません。ここに掲載されている「ノア・ノア」はダニエル・ゲラン編によるもので、ゲラン氏自身が「(詩人の手を加えたものは)当初のものよりはるかに真実味の薄い、誇張されたもの」と述べているので、初稿の風味を生かしたものであろうと思われます。「ノア・ノア」の感想については別の機会にしますが、眼の前にタヒチの情景が広がる詩情溢れる文章に魅了されました。

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