「犯罪少年」を読む

フランスの作家・劇作家のジャン・ジュネの著作を通勤途中に読んでいます。ジュネは若い頃から放浪や犯罪を繰り返し、投獄されていた時期があります。表題の「犯罪少年」は、当時の刑務所暮らしとそこで培った自己価値観を振り返って思索を交えながら描いています。この原稿はフランスのラジオで放映されるものだったらしく、内容が拒まれたので活字として公開したものだと前書きがありました。社会通念やモラルの虚飾を取り除く意図、あるいは意図しないまでもそうしたジュネの感覚は、危ういコトバを孕んでいて、ともすれば犯罪における美辞麗句とも取られかねない表現があります。人間の根源に潜む本当の意味での存在意義や尊厳を求めるために書かれた「犯罪少年」は、ジュネの描写における心理や思索、詩情を読み取り、また理解をしながらじっくり読んでいきたいと思っています。

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