閉じ込められた造形

子どもの頃、暗い狭い通路で右往左往した記憶から、僅かながら閉所恐怖症が残る自分にしては、閉じ込められた世界をイメージとして描くのはどうしたものだろうと思っています。怖いもの見たさなのか、創作は自分の記憶とは別のところで発想されるものなのか、さらに観念的なものなのか、自分にはよくわかりません。閉じ込められた造形は、ジョセフ・コーネルが作った詩的なボックスアートにしろ、若林奮が制作した全体を埋めて一部を表出した彫刻にしろ、自分が魅力を感じるものばかりで、そうした芸術家の創作活動に影響をされていることもあろうかと思います。現在制作中の陶彫新作は、まさに閉じ込められた造形なのです。ところどころ表出した部分に陶彫部品があって、埋められた部分と表出した部分の関係に今回の造形の醍醐味があります。されど自分が自分の造形世界の中に閉じ込められたら、正気を失って光を求めて彷徨い歩くかもしれません。自分の深層心理に何があるのか、閉じ込められた造形を精神のカタチとして捉えるなら、一度自分の心を分析してみたいとさえ思っています。

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