「生きのびるためのデザイン」再読

「生きのびるためのデザイン」(ヴィクター・パパネック著 阿部公正訳 晶文社刊)は30年以上も前に購入した書籍です。購入時2300円。デザイン科志望の受験生なら結構読んでいたのではないかと思います。当時は自分も友人と一緒に読み始め、自分は途中で放棄してしまったものです。頁には小さなシミが付いてしまいましたが、埃を指で落として再読を始めました。昔どこまで読んだか忘れてしまって、何となく記憶が残る箇所も多々あります。10代の終わり頃に自分は工業デザイナーになりたいと思っていました。最先端のテクノロジーを使った製品をデザインすることに漠然と憧れていた自分は、ちょうど幼い男の子がカッコいい車に憧れるように、理想的な自分の将来像を夢見ていたように思います。デザインの基礎学習を続けていくうちに、大量生産として効率化を求め、使いやすさを追求するインダストリアルデザインにおいて、自分がその世界でやれるかどうかわからない自己懐疑に陥りました。「生きのびるためのデザイン」にインダストリアルデザインが齎す社会的責任の在りようが書かれています。あるいはその箇所を読んで、デザインの与える社会的影響のことを考えていたのかもしれません。自分がそれほど有能なデザイナーになれるかどうかもわからないのに自意識過剰とも取れる発想で、若かった自分は我執の強さも手伝ってそんなことに思いを巡らせていたように記憶しています。工業デザインから志望を変えることになったのはその直後だったように思います。「生きのびるためのデザイン」を改めて読み直して、思い出した若かりし頃のひとコマでした。

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