「新宿中村屋 相馬黒光」を読んで

表題の書籍を自分としては短時間で読むことができました。彫刻家荻原守衛との関わりでしか知らなかった相馬黒光でしたが、彼女の生涯や生きた時代のことを考えると、荻原守衛との関係はほんのひとコマに過ぎないと思えます。相馬(旧姓 星)黒光(良)は仙台の没落士族の娘で、長野県穂高の相馬家に嫁ぎ、さらに夫の相馬愛蔵とともに東京に出てきて中村屋を創建した人物です。商才に恵まれていて、芸術家や学者と付き合い、亡命者や被差別者を庇護しました。当時の女性としては革新的、行動的な姿勢を持ち、ともすれば高飛車な言動や戦争協力をしたとして酷評もされていたようです。彼女は思想で動くというよりは、心情で動くタイプで、それ故誤解も生じたのだろうと思います。何はともあれ現代から見ても魅力的な人物であったことに異論はありません。明治から大正に移る時代に気骨のある生涯を終えた相馬黒光。今夏は何か日本のものを学びたいと考えておりましたが、相馬黒光の人生から見えた時代の動向を知ることになりました。もう少し掘り下げて見たい気もしています。当時を生きた人物をまた探してみたいと思います。

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