「濱田庄司スタイル」展

先日、自分の個展の最終日にギャラリーが開く時間より少々早く汐留に行き、表題の展覧会を見てきました。陶芸家濱田庄司は馴染みのある作家です。毎年栃木県益子の陶器市を訪れているので、そこに居を構えた巨匠の姿は、大変身近かで親しみが持てるのです。益子参考館は何度となく訪れた場所で、館内の土間でコーヒーを飲んだこともあります。濱田の作る褐色を基調にした厚手の陶器は、ざっくりして温かみのある器です。かけ流す釉薬はモダンで、まるで抽象絵画のようです。こんな器を作っていたら、自分さえもこの器に野趣あふれる料理を盛って客人をもてなしたいと思うでしょう。料理に限らず周囲の演出も考えるかもしれません。旧家を現代風に改築して、民芸調の骨董家具を配置して、欧州の田舎に共通する豊かな空間を作り出したいと考えます。現代建築に見られるシャープさに対峙するもうひとつのモダニズムがそこにあります。まさに濱田庄司は益子で国際的な客人をもてなし、そのモダンなスタイルによって、日本古来の伝統を現代に甦らせたと言えます。その魅力を余すところなく伝えているのが「濱田庄司スタイル」です。名も無き職人が作った家屋や家具、漆喰の壁や室内装飾の数々、それを現代の眼で見つめなおし、己の創作の中に取り入れる、民芸運動の真髄がここにあると思いました。

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