発見・再発見で変わる美術史

世界の美術史であれ、我が国の美術史であれ、無名だった芸術家の発見や再発見によって時代の奥行きが出たり、また美的基準が見直され価値感が大きく変動することがあります。停滞が続いた時代が破壊と創造を繰り返す時代に変わるときに、その時代を牽引する芸術家もいれば、表舞台に出てもよさそうな力量をもっているにもかかわらず、時代の風潮の中に没した芸術家もいます。日本の近代美術史も、最近になって取り上げられた伊藤若冲や曾我蕭白のような画力をもった画家が発見されて、その時代の様子がわかってきました。まだ謎を残す部分は、今後の研究を待ちたいと思います。先日、江戸東京博物館に久しぶりに出かけた折、思わぬ興奮が自分の体内を駆け巡りました。狩野一信という画家を自分は知りませんでした。五百羅漢100点。緻密で西洋画の陰影法を取り込んだ凄みのある画風。伝承や寓話をテーマにしながら、人物や動植物における卓抜したデッサンは具象絵画の極みです。地獄図はまるでシュルレアリスム絵画のようで、そのパワーに圧倒されました。発見・再発見により今後どんな芸術家が現れるのか、時代の手のひらからこぼれた才能の発掘を歓迎いたします。

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