「シュルレアリスムと絵画」読後感
2011年 6月 3日 金曜日
やっと「シュルレアリスムと絵画」(A・ブルトン著 人文書院)を読み終えました。随分長い間鞄に入れて持ち歩いていました。以前、A・ブルトンの「魔術的芸術」を読んで、芸術史全体を解釈しなおす壮大な論文に魅了されました。今回も同じ昂揚した気分があります。本書の解題に次のような一文があります。「~略~それは、シュルレアリスムという大規模な文学・芸術運動に加わった多くの画家たちや、その前後あるいは周辺にあった多くの画家たちの作品を、当の運動の指揮者・体現者として愛しつつ語り、鮮烈な言葉で称えつつ位置づけているからだけではない。現代社会とのかかわりにおいて芸術家の真の生き方を探りながら、またときには美術史・文化史をさかのぼって新しい『眼』で過去を読みかえながら、二十世紀芸術そのものの方向を明らかにしている書物だからである。~略~」単なる作品の解説や批評だけでなく、作品のもつ新しい価値や昂揚感を詩的イメージとして構築しなおしているところがブルトンたるところで、一文一文拘りをもって読まなければならなくなります。理由はその背後に潜むブルトン流の詩的世界が、対象とする作品と共生しながら、読者である自分の感性に謎めいた何かを投げ込んでくるからです。評論と言うより独特な文学作品として接したほうがよさそうな、そんな読後感を持ちました。
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