美的価値の転換

今まで稚拙と思われた表現が説得力のある評論により、ある日突如として生命力の溢れる豊かな表現と認識されることは、現在までの美術史を見ると起こりうる事件です。幾世紀にも亘って民衆に支持されてきた美的価値が転換期を迎える時は、その反発たるや筆舌に尽くし難いものがあります。印象派が登場した時代や頽廃芸術と烙印を押された表現主義、また破壊と創造を繰り返してきた20世紀の美術界を見ると、現在まで美的価値の転換が次々に起こってきています。何が新しい表現なのか、何が前衛と呼ばれるものなのか現在では見えにくくなっているようにも思えます。映像、建築、環境等の大掛かりな表現が現在の国際的な規模の展覧会を賑わせているようですが、全体の価値を揺るがすような事件には至っていないようにも思えます。ファッション化する文化は、その表面性や虚飾で新しい価値基準を持とうとしているかのようにも思えます。芸術運動というモノはもう旧世代のモノなのでしょうか。自分も工房に籠もって美術情報とは一線を引きながら自分の世界に没頭していますが、こうした個々の引篭もりがいろいろな意味で現代を象徴しているのかもしれません。

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