シュルレアリスム時代のジャコメッテイ

国立新美術館で開催中の「シュルレアリスム展」に出品されているアルベルト・ジャコメッテイの彫刻は、ある意味で自分の眼には新鮮に映りました。ある意味で、と言うのはジャコメッテイと言えば、全てを削ぎ落として細くなった人体塑造で知られる彫刻家だからです。固定観念があったせいか展覧会場でシュルレアリスム的な形態をもつジャコメッテイの彫刻を見た時は、まったく別人ではないかと思ったほどです。確かに図版などでジャコメッテイのシュルレアリスム時代の作品を知っていましたが、実物を見るのが初めてだったので驚いてしまいました。ブロンズに金色の錆付けを施した作品には、異様なエロティズムと原初的な雰囲気が漂っていました。「喉を切られた女」と題する床に這ったようなオブジェは、カマキリをモティーフにした何とも不思議な作品です。ジャコメッテイが塑造による独自な世界に入る前の世界観が垣間見えて、シュルレアリスム的オブジェとして、その頃にもう頂点を迎えていたのではないかと思えました。それは作為に満ちた造形で、鑑賞者に見せるために作り上げられた世界がありました。そこから脱して現実を追求する姿勢が現れて、見せる造形から思索する造形、つまりあの細くなった人体塑造に変貌したように思えます。求道者として、いつ終わるともわからない造形の継続。それが現在見られるジャコメッテイの作品なのだと思いました。

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