壁体彫刻の魅力

壁体彫刻という名称は自分にとって大変魅力的です。彫刻家を志した時は、当然平面より立体表現が好きで、立体構造の何たるかを会得したいと願って、自分は20歳代初めに粘土を手に取ったのでした。その時から立体としてモノを捉える訓練を積んできましたが、今ここにきて壁体彫刻という限りなく平面に近づいた彫刻に心が動きます。それは彫刻家辻晋堂の陶彫による作品が、時とともにしだいに平たくなり、衝立のように立ち上がって壁状になっていくのを見るにつけ、ますます彫刻が実材を生かし存在を纏うのは何故だろうと思っているからです。立体を極めると、なにか別の次元から誘われて、立体を否定しながら実際のところ立体としての存在感を高めていくのではなかろうかと考えたりもします。穴の空いた壁体彫刻は古代人の住居のようであり、悠久な時を刻んだ造形のように思えてきます。これは本当に人が作ったものだろうか、風化が齎した自然の形象ではなかろうかという錯覚に陥ります。壁には不思議な心理が働くのかもしれません。

関連する投稿

  • 朧気な次作のイメージ 陶彫部品を組み合わせて集合彫刻を作っている自分には、陶彫部品を点在させて場の空間を創出するイメージがつき纏います。集合があるなら拡散があってもいいのではないかと思うところです。次作のイメージは拡散に […]
  • 造形美術のバイブル 「芸術の意味」(ハーバート・リード著 瀧口修造訳 […]
  • オブジェの評論集を読み始める 「問いなき回答 オブジェと彫刻」(建畠哲著 […]
  • 東京の「保田春彦展」 先日見に行った東京の京橋にある南天子画廊での「保田春彦展」は、自分の胸中に深く重い印象を残す内容でした。作家が懸命に造形活動に向かう姿勢には、頭が下がる思いです。自分も「老い」を感じ始めたら、こうで […]
  • 閉じ込められた造形 子どもの頃、暗い狭い通路で右往左往した記憶から、僅かながら閉所恐怖症が残る自分にしては、閉じ込められた世界をイメージとして描くのはどうしたものだろうと思っています。怖いもの見たさなのか、創作は自分の […]

Comments are closed.