世田谷の「佐藤忠良展」

今年99歳の彫刻家。70年以上にわたって彫刻一本でやってきた人に羨望を覚えるのは私だけではないと思います。自分だって可能性無きにしもあらず、と自分を奮い立たせたい心境です。彫刻家佐藤忠良は、彫刻を始めたばかりの自分には雲の上の人でした。大学で人体塑造をやりながら、上野の美術館で開催していた「新制作展」に足を運び、佐藤忠良、舟越保武らの具象彫刻家に憧れを抱いていました。自分自身は具象から離れていくのではないかと思いつつ、当時の自分の手本がそこにあると思っていたのでした。ロダンやブールデル、マイヨールの西欧の巨匠とは資質が異なり、本当の意味で日本的な具象彫刻のあるべき方向を示唆していたように思えました。明治の彫刻家荻原守衛はロダン的な動勢や情緒を会得して、日本の彫刻界に新風を吹き込み、そして現代は佐藤彫刻のような繊細で芯の通った造形が自分の心を捉えているのです。見習うべきは造形にたいする姿勢もあります。ずっとブレないで一つの道を歩いてきた凄み。自分もかく在りたいと願った個展でした。

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