人体塑造からの転位

立体の構造を理解し把握するために粘土による具象的なモチーフを作り始めたのは、自分が20歳になるかならないかの頃でした。それは自分が初めて彫刻という表現分野に足を踏み入れた時で、覚えているのは10代後半に小さな野菜を粘土で模造したことです。大学ではもっぱら人体ばかりを作っていて、それによって解剖学的な骨格や彫刻としての動勢を学んでいたのです。夭折した明治時代の彫刻家荻原守衛の塑造に惚れ惚れしたのもその頃のことです。当時、自分は人体が面白くなっていて、池田宗弘先生の許で習作に励んでいました。人体以外のモチーフに転位したのは、いつだったのか、どんな思いが自分の中にあったのか、改めてじっくり考えてみようと思っています。人体を作っていた時に、この人体の彫刻を発表しようとは思っていませんでした。それはあくまでも立体把握のための習作として自分は認識していて、発表するのは何か別のモノと考えていたのです。画家カンディンスキーに関する書籍の影響で、自分の振り返りをしたくなり、人体塑造からの転位が何であったのか自分なりに考え始めました。今日は動機付けのみに留め、また別の機会を持ちたいと思います。

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