「風のアルファベット」I・タンギー

空漠たる風景の中に象徴めいた何かが存在しているという絵画があります。そのトーンがちょうど嵐の前の空に似て、異様な雰囲気を醸し出しています。フランス人画家イヴ・タンギーの「風のアルファベット」はシュルレアリスムの典型的なスタイルをもつ絵画です。シュルレアリスム絵画を初めて知った時、それは自分の学生時代に遡りますが、タンギーの絵画は脳裏に刻まれました。当時はスペイン人画家サルバトール・ダリが、その作品の質量とも圧倒的で、ダリこそシュルレアリスムの代表と思っていたわけですが、一方でタンギーの不安を煽るような独特な画風にも魅せられていました。横浜美術館にあるコレクションの中に「風のアルファベット」があります。これは写実的傾向が強いシュルレアリスムの傑作のひとつだと思っています。デペイズマン(意外な組み合わせと言うものでしょうか)が不思議な情景に一役買っているように思います。

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