「普通の生活」という幸福

最近の世知辛い国際情勢を見ていると、現在自分が何の心配事もなく送っている生活が、とても幸福に思えてきます。「普通の生活」という当たり前が、当たり前にならなくなっている世の中です。いつ何があってもおかしくないという感覚にしだいに犯されていくことが不安です。それでも自分だけは大丈夫と高を括っているもう一人の自分がいます。事件、事故、災害はやはり当事者にならなければわからないのかもしれません。防げるものなら防いで、安心・安全な「普通の生活」をそのまま続けたいものです。逆に芸術表現は、その動機となるモノに不安な世相を反映しているようにも思えます。満たされた幸福な世の中では芸術的に優れた作品は生まれないと思えるからです。それは時代全体に限ったことではなく、極めて個人的な事情によってバランスを失うことでも秀作が生まれることがあります。何はともあれ自分としては、制作もままならぬ事態に陥ることだけは何としても避けたいと願うこの頃です。「普通の生活」のいう幸福の中で、たとえ自己表現が薄っぺらになろうとも、安心・安全な世界で生きていたいと思っています。

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