思考を辿るデッサン

大学受験のためにデッサンに明け暮れていた時は、デッサンはもう充分と思っていました。大学では彫刻を作るための準備としてデッサンを行うことが多く、受験時代のようにデッサンが目的になることはなかったのです。ところが今はデッサンを目的としたデッサンをもう一度やりたいと思っています。一日1点ずつ葉書大の平面に作品を作っているRECORDで、可能なら風景デッサンをやってみたいと思います。時間のない日常からの逃避かもしれませんが、目に映るモノを見た通りに描くというプリミティヴな行為がいいと改めて思います。「目に映るモノを見た通り」、これが曲者です。彫刻家ジャコメッテイの晩年のデッサンはそれを追求して、空間に切り込むような線になり、形態も細くなっていったのでした。リアルとは何か、目の前に存在するモノは、ルネサンス以来の遠近法、透視図法で本当に成り立っているのか、そんな思索を続ければ、デッサンは造形美術の基本でありながら自分の思考を辿る表現とも成り得るのです。受験時代と違い、今の自分はデッサンひとつでも難しい課題を背負うことになるのかもしれません。

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