窯出しの緊張感

陶による表現は、最終段階でそれまで手塩にかけてきた作品を窯に入れて高温で焼く工程があります。土練りを丹念に行うのも、タタラや紐作り、またはロクロを回して成形するのも、全てこの最終段階でいかに自分の意図するものにできるかを求めたいがためにやっているようなものです。乾燥もまた然り。自分は釉薬は使いませんが、釉がけをするなら、さらに釉薬が高温で変化することを見極め、それについての研究も必要になります。最終段階の焼成で上手くいかなければ今までの細心の努力は全て水の泡。そこが陶による表現の醍醐味であり、また辛いところでもあるのです。先日、仕事帰りに工房に出かけ、先週末に窯に入れた作品の窯出しをしました。何年やっても、この時の期待と絶望の入り混じった緊張感は好きになれません。窯の扉を少々開けて、陶彫作品が壊れていたり変形していないかを確かめて、大丈夫とわかった時は、ホッと胸を撫で下ろします。とにかく新作部品第一号は何とか成功したのでした。今週末にまた窯入れをします。やっと今になって新作が少しずつ出来上がっていく気分に浸れました。

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