木彫「進化の過程」

朝日新聞の美術評によると「古い民家を思わせる木彫シリーズだが、今作では地虫のような形に。題名と合わせて見ると、はいつくばってでも前に進もうとする、作家の意思表明ともとれる。老いるにつれ、できることは限られていく。だが、保田は創作から離れない~略~」(10月6日付2010年夕刊)とあった「保田春彦展」(南天子画廊)。出品された木彫「進化の過程」は重くうずくまる姿態をもった抽象彫刻です。「進化の過程」とは、どういう意図でつけられた題名でしょうか。この世に生を受け、命を謳歌して、やがて宿命として死を受け入れる、その落日のような燃え立つ時に、自らを奮い立たせ、何かに背中を押されて作られたモノという印象を受けたのは私だけでしょうか。にもかかわらず進化を繰り返し蘇生を願う彫刻。己を乗り越えようとする強靭な意志が「進化の過程」ではないかと思えるのです。作家は無様なカタチを作ろうとしたのかどうか定かではありませんが、うずくまるカタチが結果的には、気負いが無く、魂の込められたカタチになっていき、それが観る人の心に刻まれる作品になったのは確かです。

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