怒涛図「男浪」「女浪」

何年か前に長野県小布施に行きました。確か麻績の池田宗弘先生宅にお邪魔した帰り道だったように思います。目的は葛飾北斎の足跡を辿ることで、小布施にある北斎館を見たかったのです。そこで感動をしたのは祭屋台の天井絵でした。北斎の肉筆画では最大級の大きさです。その中でも怒涛図「男浪」「女浪」を見た時は、視線が釘付けになり、食い入るように見つめてしまいました。有名な富獄三十六景の中にある「神奈川沖浪裏」で表現された襲いかかるような浪頭。そんな浪の表現が、やや抽象性をもって怒涛図「男浪」「女浪」に描かれているのです。その構成たるや驚くべきスケールをもって、浪の渦の中に我々を誘っているかのようです。この浪の表現を何とか自分のものにできないものか、書棚から何気なく取り出した北斎館の図録を見ながら、来月のRECORDで試したい欲求に駆られています。

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