「有元利夫展 天空の音楽」

昨日のブログに「鴨居玲 享年57歳」と書きましたが、今日取り上げる画家は38歳の若さで急逝した有元利夫です。折りしも同時期に別々の美術館で、両人とも没後25年の展覧会が開かれていたので、先日「有元利夫展 天空の音楽」を見に東京都庭園美術館に行ってきました。このアール・デコ調の美術館は有元ワールドにとても合っていて、その環境の素晴らしさがとても心地よく感じられました。38歳と言えば、まだ自己表現の確立に至っていない場合が多く、自分を引き合いに出すのも恥ずかしいのですが、自分が38歳の頃は創作活動に自信を失いかけていた頃でした。有元利夫はそういう意味では早熟で、バロック音楽に触発された静謐な世界を形作っていて、その説得力は驚くばかりです。展覧会にはアトリエを写した大きな画像がありました。そこには大小の画布が壁一面に掛かっていて、途中で筆をおいてあれこれ眺めては、壁の中から1点を選び出し筆を入れるという制作方法が採られていたようです。実はこんな制作風景が自分には気になるのです。まだ有元が生きていれば、どんなに素晴らしい世界を築いたことか、それを考えると残念でなりませんが、時折このような展覧会を開催して、私たちの目に常に新鮮な感動を齎せてほしいと切望してやみません。

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