鑑賞から生まれるコトバ

「瀧口修造全集Ⅴ」(みすず書房)には、作家の個展や出版等に寄せる滝口の文章が掲載されています。それは通常の美術評論として書かれたものや、作品鑑賞から生まれ出た詩的なコトバも数多くあります。そうしたコトバは、実際の展覧会を見ていない自分にとって、美術作品を動機付けとした別の世界感を形作っているように思えます。詩をよく味わいイメージするところを探ると、その動機となった美術作品との間にどんな関係が結ばれているのか興味が尽きないところですが、今となっては過去の展覧会を見ることは不可能です。よく知られた作家や作品の場合には、対象となるモノと瀧口修造の関わりが多少は理解できて、それだけでも面白いと感じます。様々な表現を、あらゆる媒体を使って作品化する世界にあって、それを考察をする上で、瀧口修造の試みは自分の鑑賞力を高め、翻って自己表現を考える上でも、一助になっていると確信しています。

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