聖夜の思い出

自宅から比較的近い場所に職場があるため、通勤で繁華街を通ることがなく、クリスマスのイルミネーションを今年はついに見ずに、クリスマスが過ぎていきます。本来は主イエスの誕生した日を祝う宗教行事なので、樅の木に飾った電飾を愛でることはないと思いますが、この雰囲気を生活のデザインとして取り入れるのはいいと感じています。色とりどりの照明に飾られた街は美しいと思います。最近の日本はこうした演出が大変巧みになったと思っています。いつぞやのブログに書きましたが、自分にとってのクリスマスはルーマニアの寒村で迎えた25日でした。その時の思い出が今だに脳裏に焼きつき、ヨーロッパの原点を見たような気がしたのです。小さな木作りの教会に集った村人たちの聖歌と祈りの姿勢が忘れられません。当時住んでいたウイーンのステファンス寺院の壮大な祈りも忘れられません。ゴシック建築に立ち上るパイプオルガンの響きと朗々を澄み渡る司祭の声。主イエスの誕生に思いを馳せるヨーロッパの人々の真摯な宗教感覚に、この時ばかりは日本人との大きな隔たりを感じました。毎年クリスマスの時季になると、こんなことを思い出しながら、街のイルミネーションを楽しんでいるのです。今年ばかりは仕事詰めで、ただただ思い出だけが一人歩きを始めたようです。

関連する投稿

  • 若かりし頃の貧乏旅行 「保田龍門・保田春彦 […]
  • 軽妙洒脱な手紙から 故ドイツ文学者の重厚な評論を読んで、20数年前暮らしていたウィーンに思いを馳せている時に、やはりウィーンで知り合ったエッセイストのみやこうせいさんから軽妙洒脱な手紙が届きました。太めのペンで書かれた […]
  • 「木」という素材 祖父が宮大工、父が造園業という環境で育った自分の周囲には木材が豊富にありました。でも木の美しさに触れたのは自分の生育歴からではなく、滞欧中に訪れたルーマニアのマラムレシュ地方に点在する木の家々を見た […]
  • ギリシャのルーマニア人 表題はみやさんの著作「ルーマニア […]
  • 大内宿に纏わること 福島県南会津郡下郷町にある大内宿は数回訪れています。最初はずい分前になりますが、豪雪の積もる大内宿に車のタイヤを滑らせながら入りました。奥深い里という印象でした。自分の出身校には民俗学研究室があって […]

Comments are closed.