芸術家の生きざま

瀧口修造著「幻想画家論」に出てくる芸術家は、幻想的な作風を確立した人ばかりなので、その生きざまも常軌を逸しているようです。昨日ブログに書いたピエロ・ディ・コジモは「かれは人間よりも動物に近い生活をしていた…決して室内を掃除させず、食事も飢じいときにとる…葡萄はのび放題で、地を這うままにうちすてて置いた…しばしば動物や植物などの畸形のものを見に出かけ…病人が唾を吐きかけたしみだらけの壁を立ちどまって凝視しながら、そこに騎馬戦争の場面や見たこともない幻想的な都市が見え…かれはゆで卵を常食のようにして…50も煮て置いて、籠のなかから一つずつ取り出して食べる…」といった生活ぶりが、常人ではない偏狭ぶりをよく表しています。また、ゴーギャンは「散歩しているところを…水兵と大喧嘩になり踝を砕かれた…パリで最後の夜、影のように寄り添ってきた街の女から有毒の接吻をうけた…くじいた足は僕を極度にくるしめ、二つの傷は口を開けたまま医者も閉じる術を知らない(於タヒチ)…パリの最後の夜にうけた梅毒に加えて、湿疹は脚の半分を侵し、夜も眠れなかった。」という記述があります。そんな生活のあれこれが作品と共に印象に残って、それでも芸術を求めて生きた彼らは、凄まじい孤独と戦った生涯と言えるでしょう。  Yutaka Aihara.com

関連する投稿

  • 「中空の彫刻」を読み始める 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]
  • 知的活動と手仕事 「キルヒナーは、1925年の自分の作品についての重要な自伝的省察において、『知的活動と手仕事の結びつきにおいて世界でもっとも美しくユニークな』芸術家という職業を彼が二元的に理解していることを明確に述 […]
  • 夏気分を惜しみながら… 今日で8月が終わります。月が変わることに郷愁を感じるのは夏の特徴かもしれません。開放感あふれる夏だからこそ流行り歌にもなり、移ろう夏気分を惜しむ情景になるのだと感じます。今月の創作活動を省みると、と […]
  • 土練りのあと美術館へ… 成形に使う陶土がなくなり土練りをしました。陶彫は土を単身ではなく複数の土を混ぜて使っているのです。近々新しい土錬機が来るので、今使っている土錬機最後の仕事かもしれません。自分と懇意にしている陶芸業者 […]
  • ドイツ表現派の書籍 「バルラッハ~神と人を求めた芸術家~」(小塩節著 日本キリスト教団出版局)を読んだ後に、「右手と頭脳~エルンスト・ルートヴィッヒ・キルヒナー《兵士としての自画像》」(ペーター・シュプリンガー著 […]

Comments are closed.