作品が醸し出す多様性

何年か前に横浜市民ギャラリーに作品を並べていた時、ひとりの鑑賞者から「これはテロに対する抗議か?」と聞かれたことがあります。爆風で半分壊れたような陶彫による都市は、あるいはそんな捉え方ができるのかもしれません。9月11日になると、そんな一言が頭を掠めます。もちろん自分の作品は政治や社会性をテーマにして作っているわけではありません。ただし、発想はどうであれ、観る人がそう感じ取ってもらえるならそれで構わないと思います。自分が思いもよらなかったことを感想として言ってもらえる事があります。驚きとともに嬉しく感じることがあります。様々な解釈が可能な作品であればこそ、観る人が自由に想像してくれるのだと思っているからです。作品に説明の要素はいらないというのが自論です。それは抽象に限らず、やや具象傾向であっても、多様な解釈ができるものがいいと自分では思い込んでいるのです。嬉しいのは自分の作品に上手下手というテクニックに関する感想はなく、これはこんなものを表現したのではないかと同意を求められることです。そうだそうだと否定しないでいると、本当のところはどうなのさと詰め寄られます。作品が醸し出す多様性。これが自分の作品の命です。

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