「フランス絵画の19世紀」展

今日まで表題の展覧会が地元の横浜美術館で開催されていました。退屈しそうだと思いつつ出かけてみたら、逆に新鮮な気分に浸れて良かったと思いました。アカデミズム。これはフランス印象派の少し前まで、サロン(フランスの展覧会場)で発表することを主体とした絵画を指して言います。自分が美術の世界に進もうと考えていた頃に習ったデッサンがまさにアカデミズムだと思っています。受験デッサンは、陰影を捉えて形を写実的に描くことを目的としていて、自分もその頃は人より巧みになりたいと日夜励んでいました。現代から見れば、活力の無い旧態依然とした世界ですが、逆に現代美術の混沌とした広がりを考えると、そんな生真面目で丁寧で浮いた表現が、或いは新鮮に見えても不思議ではありません。歴史画や神話を題材にした大げさな絵画は、やはり戴けないところもありますが、通念的な絵画たる絵画を見たような気がしました。手間のかかった筆致や色合いや細部の表現が、ある意味では芸術家が幸福だった時代を表しているようにも思えてきます。デッサンを習いかけの頃だったら、巧いなぁと溜息をついただろうにと思いながら会場を後にしました。                      Yutaka Aihara.com

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