詩的世界の散歩道

書店に入り、ふと捲ったページにあった一文が忘れなくなったり、画廊で、ふと目にした絵画の情景が記憶に焼きついてしまったりすることがあります。コトバは自分が忘却した記憶のどこかと触れ合って、説明のつかない懐かしさが頭を過り、繰り返し暗唱してしまうことがあります。詩的な世界に遊ぶ第一歩かもしれません。つらつらコトバを読んでいくと、詩的世界に彷徨い、自分だけの世界を築き上げて、その中を散歩しているような錯覚に陥ります。それは自分が育った原初的な風景と密接に関わりを持った世界だと感じています。その後の人生で知的に仕入れた世界とは異なり、それは幼い頃に記憶にすり込まれた情景とそこに満ちていた大気であって、五感を通して感じていたことが、コトバやカタチやオトを通して甦るのかもしれません。現代の芸術は哲学的な傾きの様相を呈していますが、そればかりではなく、人の記憶や生理に関わる部分も任なっていると考えます。      Yutaka Aihara.com

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