ピラネージの「牢獄」連作

町田市の国際版画美術館で開催されている「ピラネージ版画展」で、最も自分の心を捉えた作品は「空想の牢獄」として制作されたエッチングのシリーズです。ざっくり描かれた空間は、閉塞感はあるものの外からの光に照らされて石壁や階段、鎖や刑具が置かれている状況がわかります。連作はどれも錯綜する建築的要素が形作る空間、モノクロのコントラスト、舞台装置のような幻想的な雰囲気を持っていて、何か得体の知れない感動を呼び、自分はしばらくそこに立ち尽くしてしまいました。作品にのめり込むというのは久しぶりに味わう気分でした。自分が現在取り組んでいる架空都市に似た空気を感じたせいでしょうか。この連作が欲しい、手許に置きたいと感じたのも初めてでした。それより何かわからない、言いようのない空間に対するイメージをこの「牢獄」連作から授かった気がしています。むしろ心に留めている漠然としたイメージの方が自分には有難いのかもしれないと感じています。Yutaka Aihara.com

関連する投稿

  • 週末 六本木・銀座・上野を渡り歩く 今日は東京の博物館、美術館、画廊を回ろうと決めていました。後輩の彫刻家が二科展出品、同僚の画家がグループ展参加、その他見たい展覧会があって、二科展とグループ展の日程が合うのが今日しかなかったのでした […]
  • 週末 制作&横須賀へ… 漸く週末がやってきました。冷たい雨が降る中、朝から工房に出かけ制作に没頭しました。このところ頻繁に来ている大学院生もいて、お互い作業に集中していました。今日の作業は午後3時までと決めていました。その […]
  • 平成最後の1月を振り返って… 今年の5月に新しい元号になることから、平成最後という冠があらゆるところで用いられそうですが、平成最後の1月が今日で終わります。光陰矢の如しと言うけれど、本当に今月は時間が経つのが早く感じられました。 […]
  • 「花器〈ブドウとカタツムリ〉」感想 先日、東京のパナソニック汐留ミュージアムで開催されていた「アール・ヌーヴォーのガラス」展を見に行って、とりわけ印象に残った作品が「花器〈ブドウとカタツムリ〉」でした。図録によると「無色ガラスに黄色と […]
  • 三連休 新作の制作目標 今日から三連休です。現在取り組んでいる陶彫の新作は2点あります。大きい作品は擂り鉢状の円形をした作品です。もうひとつは絵画的な構成から発展した作品で、擂り鉢状の作品に比べて、小さいスケールで作ってい […]

Comments are closed.