「種子を粉にひくな」

表題はドイツの女流画家ケーテ・コルヴィッツの日記につけられたタイトルです。ブログでは8月11日に「ケーテ・コルヴィッツの肖像」の感想を書いています。同時に読み始めた2冊のコルヴィッツの本でしたが、かなり時間差がついてしまいました。日記の方は鈴木東民・訳によるもので、内容は芸術家というより一人の人間としてのコルヴィッツの心情が語られていて、じっくり味わいながら、中断も余儀なくされて、今やっと読み終えたところです。家族を思い、母として生きたコルヴィッツ。第一次大戦で次男を失い、第二次大戦で孫を失い、ナチスによって芸術活動を封じられ、ヒットラー政権が終わる寸前に他界したコルヴィッツ。作品に込められた思いが伝わる日記の内容でした。「種子を粉にひくな」という副題は、戦争でこれ以上若者を失うことに身をもって反対したコルヴィッツが、ゲーテの言葉を引用したものです。この夏は、社会的表現にその才能を捧げた画家を今一度振り返ってみる機会を持ちました。                    Yutaka Aihara.com

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