ジャコメッテイ・現実を掴む
2008年 2月 8日 金曜日
ジャコメッテイの彫刻は、ムアからやや遅れて、図版によってその存在を知りました。細く削ぎ落とされた人体。大きめの台座から陽炎のように立ち、人の存在自体が無くなってしまいそうな表現。当時ムアばりの豊かな量感を求めていた自分にとって、初めジャコメッテイは関心のある作家ではありませんでした。そのジャコメッテイに興味を持ち始めたのは、日本人による書物によってでした。ジャコメッテイのモデルをつとめた矢内原伊作による著書を読んで、ジャコメッテイの真摯な制作姿勢に打たれてしまいました。ジャコメッテイが現実の空間を自分なりの解釈で掴むために、昼夜を分かたず奮闘し、作っては壊し、壊しては作る毎日を繰り返している様子が文章から伺えます。本人から見た立体を手前から後ろに至るまで、空間を正面から真っ直ぐに捉えようとして、あのように細くなってしまうようです。それは空間に関する新しい解釈であると感じました。量感を持たない彫刻表現に自分を向かわせた第一歩がジャコメッテイでした。
関連する投稿
- 「中空の彫刻」読後感 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]
- 「炻器におけるいくつかの彫刻的表現」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第4章 陶製彫刻と木彫浮彫(1889年と1890年)」の「4 […]
- 「結語」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「結語」の「1 木彫と陶器」「2 親密な環境における彫刻」「3 […]
- 「アヴィランドのアトリエとの関係」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第2章 最初の陶器(1886秋~1887初頭)」に入り、今回は「2 […]
- 「状況-マルティニーク島滞在」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中で、今日から「第3章 彫刻的陶器への発展と民衆的木彫の発見(1887末~1888末)」に入ります。今回は「1 […]
Tags: 彫刻, 書籍, 芸術家
The entry 'ジャコメッテイ・現実を掴む' was posted
on 2月 8th, 2008
and last modified on 1月 30th, 2010 and is filed under note.
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.
Both comments and pings are currently closed.