ムア・内なる空間

豊かなボリュームをもつ彫刻で知られるイギリス彫刻界の第一人者ヘンリー・ムアは外に向かうボリュームだけでなく、彫刻の内側にもボリュームをもつ構造でも知られています。彫刻に穿った「穴」の造形をムアから知り、内側にも空洞というマイナスの空間があることを認識しました。つまり外と内にそれぞれ空間がある二重構造になっているのがムアの特徴です。これはあらかじめ内側を空洞にしなければならない陶彫の技法では、大変都合のよい空間解釈になります。陶彫は簡単に言えば陶器の壺に穴をあけることにより内側の空間を意識させるというものです。器の機能はなくなりますが、まさに外と内の二重構造をもつ彫刻に生まれ変わるのです。内なる空間は壁で遮られた空間であり、また秘められた部分とも思えて、覗いてみたい気持ちにさせられます。さらに全体構造を捉える意味で外と内に広がる空間は、視覚あるいは触覚を楽しませてくれるものでもあるのです。        Yutaka Aihara.com

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