シェーンベルクの無調音楽

ドイツ表現主義は絵画の世界だけではなく、演劇や音楽や映像表現においてもありました。人の内面世界を描くのは何も絵画に限ったことではないし、ぎくしゃくした感情を表現しようとすれば、今までの方法では難しいと考えた結果が表現主義となったと思います。自分はウィーンに暮らした20数年前に、なかなか理解しにくい音楽に接することがありました。これはまさしく表現主義の音楽で、旋律やリズムが聴き取れず、不安定なまま音楽が終わってしまいました。シェーンベルクによる無調音楽というもので、初演当時は大変な物議を醸し出したものだそうです。ウィーンは音楽の都として中世から続く伝統を持っている都市です。そこに現れた新しい価値観による無調音楽なるものが、一般大衆に受け入れられようはずがありません。自分も表現主義の美術には関心があって即刻受け入れたにも関わらず、音楽に関しては初めに拒絶がありました。何度か聴いて理論もわかって、ようやく受け入れましたが、演奏中はかなりの緊張を強いられるのは今も変わりません。 Yutaka Aihara.com

関連する投稿

  • 横浜山下町の「灯りの魔法」展 横浜山下町にある人形の家で「灯りの魔法 […]
  • 東京京橋の「サイトユフジ展」 画家サイトユフジさんが東京の京橋にあるギャラリー東京ユマニテで個展を開催しているので、家内と見て来ました。私は20代の頃、オーストリアの首都ウィーンに滞在していましたが、サイトさんはその頃既にウィー […]
  • 東京竹橋の「あやしい絵展」 先日、東京竹橋にある東京国立近代美術館で開催されている「あやしい絵展」に家内と行ってきました。ウィークディにも関わらず鑑賞者が多く、コロナ渦の影響もあってネットでチケットを申し込む方法は定着したよう […]
  • 新聞掲載のフロイトの言葉より 昨日の朝日新聞にあった「折々のことば」(鷲田清一著)に興味関心のある記事が掲載されていました。全文書き出します。「百パーセントのアルコールがないように、百パーセントの真理というものはありませんね。ジ […]
  • 陶彫の出発点を考える 「知的な手による生命の表現によって、まさしく陶芸を彫刻の高みに引き上げることができると同時に、陶芸の素材によって彫刻を刷新することができるというのがゴーギャンの主張であった。」これは現在読んでいる「 […]

Comments are closed.