警告つきの愉快な仲間たち

ヒエロニムス・ボスの絵画はどれをとっても愉快でたまりません。妖怪に恐ろしい仕打ちを受けている人間がいて、そこに様々な謎や物語があって、細部を見ていると飽きることがありません。これは画家から発せられる社会に対する警告であり、辛辣な風刺だと思います。ボスはどんな人だったのでしょうか。中野孝次著「悦楽の園を追われて」の中で、ボスは「非常に感じやすい、行動力のない、受動的な人」と推測されています。この推測は自分にもわかるような気がします。そういう寡黙な人だからこそ、こういう絵が描けたんだと思います。ですが、恐ろしい警告とは別に、自分には登場する妖怪たちが愛すべき存在として見えてきます。今風に言えばボスキャラです。最近、美術館でこのボスキャラの立体フイギアを売り出しています。これも現代の風潮かなと思います。何でもマスコット化、アイドル化してしまう傾向はボスにも及んでいると言えます。果たしてボスキャラのグッズは売れているのでしょうか。常々自分は欲しいと思っているのですが。

関連する投稿

  • 「中空の彫刻」読後感 「中空の彫刻」(廣田治子著 […]
  • 「状況-ファン・ゴッホとの関わり」について フランス人の芸術家ゴーギャンの生涯の中で、劇的とも言える一幕があり、そのドラマティックな事件がゴーギャンを美術史とは関係なく、世界的に有名にしたと言ってもよいと思っています。それはオランダ人の画家フ […]
  • 「ロダンとの関係に関する仮説」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第4章 陶製彫刻と木彫浮彫(1889年と1890年)」の「5 […]
  • 「状況-マルティニーク島滞在」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中で、今日から「第3章 彫刻的陶器への発展と民衆的木彫の発見(1887末~1888末)」に入ります。今回は「1 […]
  • 「グロテスク」について 「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第3章 彫刻的陶器への発展と民衆的木彫の発見(1887末~1888末)」に入り、今回は「4 […]

Comments are closed.